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8.07.2010

原爆記念日に

広島・長崎に原爆が投下されて65周年の記念日にちなみ、感想を。

(1)バンクーバー時間8月7日にテレビジャパンの、NHKニュースのなかで、イラクファルージャにおける2004年(アメリカの無差別総攻撃があった)以後の小児がん患者や白血病患者の急増、奇形児の誕生の増加などの紹介があった。

(2)日刊ベリタ紙上に書いた落合の記事(8.06)はファルージャにおける下記の統計値を紹介している。

(a)幼児死亡率は、1000人誕生中80人で、周辺国の数倍以上(エジプト19、ヨルダン17、クウェート9.7)。
(b)癌は総体で4倍増加.14歳以下の小児癌は12倍、白血病は38倍、乳癌は10倍。これらのデータは広島の放射能による白血病の増加(17倍)よりも高い率であるうえに、その発生が広島よりもかなり速い。
(c)新生児の性比は通常1015男児/1000女児であるが、2005年以後のファルージャでは、850/1000で男児が非常に減少している。これは、遺伝子変化の影響が男児により多く現れるためで、広島の戦後にも見られた。なお、統計には現れないが、新生児の奇形もかなり多いらしい;例えば、頭を2つ持った女児とか、下半身不随とか。

(3)NHKの放送では、こうした現象の原因にはいっさい触れられていないが、日刊ベリタで紹介した専門家による報告書は、原因としてある種の放射性物質を示唆し、暗に劣化ウラン弾としている。劣化ウランは、その名から、原爆に使用されるウランとは異なり、その放射能は問題にならないという印象を与える。劣化ウラン弾を使用する側は、そう主張しているので、そのように思う人が多いのではないかと考えられる。しかし、上の統計にもあるように、例えば白血病の発生はファルージャでは、広島でのそれの2倍以上であり患者の増加率は広島よりもかなり速い。おそらく、放射性物質の単位面積あたりの量は、ファルージャのほうが、広島よりもかなり多いのではないかと思われる。これは、劣化ウラン弾は攻撃対象物周辺に、大量のウラン化合物の微粉末をまき散らすためである。そしてこの微粉末をそこに生活する人々は呼吸とともに吸い込まざるをえないのである。とくに、劣化ウラン弾により破壊された戦車などに取り付いて遊ぶ子供達に甚大な影響を及ぼしている。これは、原爆の炸裂により広範囲にまき散らされた放射能よりも影響力が大きい。放射性物質が皮膚など体外から作用する場合、その作用は皮膚への直接的な影響と、皮膚などを通しての体内への影響とあるが後者の影響はあまり大きくない。しかし、体内に一度入りこんだ放射性物質はその物質が体外へ排出されない限り、放出し続ける放射線で、その物質の周辺の体組織を破壊しつづける.この体内被爆のほうが、影響ははるかに大きいのである。劣化ウラン弾は、原爆のように瞬時の大量殺人は起こさないが、ローカルの人々への健康への影響は原爆に劣らず甚大である。

(4)今年の原爆記念日は、国連事務総長や、核保有国—米、英、仏の代表などが出席するという、シンボリックにすぎないとはいえ、記念すべき年になったことは結構である。いわゆる核兵器は大量破壊兵器として、その悪は認識しやすい(といっても日本人以外にはなかなか実感が難しいであろうが)し、その廃絶が促進される気配が世界中に出て来たことは喜ばしい。日本がそのような運動で世界の指導的役割をはたすことが望まれる。

(5)20世紀中頃までに人類は、核分裂(核融合も)など理論を確立し、その実用化を進めてきた。「科学」として人類の知識を促進することは望ましい。しかしその知識を応用するには、人類による周到な配慮がなされなければならない。核分裂による大量エネルギーの平和利用(原子力発電)も、核物質に常に付随する放射能の問題を、無視ではないが、十分な解決法を確立する前に、広範に使用してしまっているし、地球温暖化軽減の名の下に、核発電をさらにふやす傾向にある。原子力発電により長期の潜水が可能になったために、そうした利用も増えた。これらの施設が事故を起こせば、直ちに放射能汚染がその周辺に起ることは避けられない。そのものの事故でなくとも、不完全に廃棄処理された放射性物質からの放射線、また環境へ拡散した放射性物質からの放射線は、人間その他あらゆる地球上の生物に影響を及ぼすし、すでにかなり広範な影響を及ぼしているものと思われる。放射能の影響は、普通目に見えない。(なお、原爆の大量破壊は、放射能よりも、物理的(熱と風力)なものによる)。残念なことには、かなりの放射性物質がすでに地球上にバラまかれてしまっているし、その影響はあまり目に見えない形で、徐々に人類とその他の生物を蝕んでいく。
 ところで、ウランは地球上にかなりの量、鉱物として存在するのである。そして、この鉱物も放射能をもってはいるのである。しかし、これらの鉱物がその場に固定されているかぎり、あまり拡散することはない。したがって、今後の地球上の生命を放射能から守るためには、これ以上のウラン鉱物の採掘、利用、拡散を押しとどめる必要がある。核兵器廃絶の運動とともにこの点についての運動も進める必要がある。特に、カナダはウランの大供給国であるから。
落合栄一郎
 

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